取引所が破綻したら預けた暗号資産はどうなる?分別管理・信託・優先弁済の仕組み
国内の暗号資産交換業者が破綻したとき、預けた日本円と暗号資産がどう扱われるかを、資金決済法と内閣府令の条文、Coincheck・GMOコイン・bitbankの公式説明で整理します。守られない場合や貸暗号資産の扱いも先に確認します。

国内の登録業者に預けた日本円と暗号資産は、法律上、業者自身の財産と分けて管理する義務があり、破綻したときに優先して返してもらう仕組みもありますが、全額が戻ることまでは保証されていません。
確認日: 2026年10月23日。この記事は日本の暗号資産交換業者(金融庁・財務局の登録業者)に預けた日本円と暗号資産を対象とし、海外の業者や個別の会社の経営状態の評価は扱いません。
本文の公式リンクは広告ではありません。ヒーロー画像はAI生成のイメージです。法令や各社の説明は改正・改定されることがあるため、最新の内容は出典から確認してください。
1. 先に知っておくこと:守られない場合がある
最初に限界を押さえておきます。分別管理や信託は、預けた資産を業者の財産と混ぜないための仕組みで、暗号資産の価格の下落から守るものではありません。bitbankの信託保全の説明には、信託保全は暗号資産取引の元本を保証するものではない、という趣旨の注意書きがあります。
同じ説明では、破綻やシステム障害などで信託すべき金額が正しく計算できなかった場合、信託された金額が不足し、金銭の一部が返還されない場合があるとしています。預けたお金が実際に信託されるまでには時間差があり、必ずしも全額が信託されていない場合がある点も書かれています。
Coincheckの貸暗号資産取引説明書も、同社が破綻した場合には資産を返還できなくなり、損失が生じる可能性があると説明しています。返還の手続きは破産法・民事再生法・会社更生法などの法令に沿って進むため、時間がかかることも前提にしておきます。
2. 法律が業者に求めていること
暗号資産交換業者の預かり資産の扱いは、資金決済法の第63条の11と、それを受けた内閣府令(暗号資産交換業者に関する内閣府令)で決められています。預けたものごとに整理すると、次の図のようになります。
| 預けたもの | 法令が求める管理 | 根拠 |
|---|---|---|
| 日本円(金銭) | 業者の金銭と分けて管理し、信託会社等に信託する | 資金決済法 第63条の11第1項、内閣府令 第26条 |
| 暗号資産 | 業者の暗号資産と分け、誰の分かすぐ判別できる状態で管理する | 資金決済法 第63条の11第2項、内閣府令 第27条第1項 |
| 管理の状況 | 毎年1回以上、公認会計士または監査法人の監査を受ける | 資金決済法 第63条の11第3項、内閣府令 第28条 |
日本円の信託では、弁護士・公認会計士・税理士などを受益者代理人に置くことが要件になっています。業者の登録が取り消されたときや破産手続きなどの申立てをしたときは、この弁護士等の受益者代理人が権限を使う、と内閣府令で定められています。
3. 暗号資産は原則「ネットから切り離して」保管する
預かった暗号資産について、内閣府令は、移転に必要な情報(秘密鍵など)を常時インターネットに接続していない電子機器や記録媒体に記録して管理する方法、またはそれと同等の安全管理措置を求めています。一般にコールドウォレットと呼ばれる管理方法です。
例外として、利用者の出金などを円滑に進めるため、必要最小限の暗号資産はそれ以外の方法で管理できます。この例外の分は、預かっている暗号資産全体を日本円に換算した額の100分の5を超えない範囲に限られています(内閣府令 第27条第2項)。
さらに、この例外の方法で管理している暗号資産と同じ種類・同じ数量の暗号資産を、業者は「履行保証暗号資産」として自分で持ち、ほかの自己の暗号資産と分けて管理しなければなりません(資金決済法 第63条の11の2)。ネットにつながった側で事故が起きた場合の備えとして置かれている仕組みです。
4. 破綻したときの「優先弁済」とは
資金決済法 第63条の19の2は、業者に暗号資産の管理を任せる契約をした利用者が、業者に対して持つ「暗号資産を返してもらう権利」について、他の債権者に先立って弁済を受ける権利を定めています。
対象になるのは、業者が分別管理している利用者の暗号資産と、上で触れた履行保証暗号資産です。業者の取引先や貸し手より先に、これらの暗号資産から返してもらえる位置づけです。ただし、対象の暗号資産そのものが流出などで足りなくなっていれば、権利があっても全量が戻るとは限りません。
日本円のほうは、信託された金銭が業者の財産から切り離されているため、破綻の影響を受けにくい仕組みです。bitbankの説明では、破綻したときの問い合わせや返還対象者の特定の窓口は社外弁護士の受益者代理人で、返還は登録済みの銀行口座への振込みで行うとしています。
5. 各社の公式説明で確認できること
3社とも、法令に沿って預かり資産を分別管理していると公式に説明しています。確認日時点で読めた主な記載は次のとおりです。管理体制は変わることがあるため、口座を作る前に各社の最新の説明を読んでください。
- Coincheck — 貸暗号資産取引説明書の「利用者財産の安全管理」で、預かった暗号資産は外部のネットワークに接続されていないコールドウォレットで、利用者ごとの持ち分がデータ上すぐ判別できる状態で管理し、帳簿の残高とウォレットの残高を毎営業日照合すると説明しています
- GMOコイン — セキュリティのページで、暗号資産は同社保有分と利用者保有分を物理的に分けて保管し、預かった金銭は自己資金と分けて日証金信託銀行の信託口座で管理すると説明しています
- bitbank — 「お客さま資産保全への取り組み」で、預かった金銭を日証金信託銀行に信託し、受益者代理人に社内の取締役と社外弁護士を選任していると説明しています
6. 注意:貸暗号資産は優先弁済の対象外
預けた暗号資産を業者に貸し出す「貸暗号資産」のサービスでは、扱いが変わります。Coincheckの貸暗号資産取引説明書は、同社が借り受けた暗号資産は分別管理の対象外で、優先弁済権を持たないと明記しています。
つまり、貸し出している間の暗号資産は、ここまで説明した分別管理や優先弁済の仕組みの外にあります。貸暗号資産を使うかどうかを考えるときは、この点を各社の説明書で先に確認してください。預かり資産全体の守り方は仮想通貨の守り方、業者が登録を受けているかの確かめ方は暗号資産交換業者の登録を確認する方法にまとめています。
7. よくある質問
Q. 銀行の預金保険のように、一定額まで補償する制度はありますか?
A. 確認日時点で読んだ資金決済法と内閣府令の条文には、暗号資産交換業者の預かり資産を一定額まで公的に補償する仕組みは見当たりませんでした。条文が定めているのは、分別管理・信託・監査と優先弁済の権利です。
Q. 自分のウォレットに移したほうが安全ですか?
A. 自分で管理すると業者の破綻の影響は受けませんが、秘密鍵をなくしたり盗まれたりした場合の責任も自分で負います。違いはウォレットの種類と選び方で整理しています。
8. 次に確認すること
口座を作る前に、利用を考えている業者の分別管理と信託の説明、貸暗号資産を使う場合はその説明書の分別管理の項目を読んでおくと、破綻時の扱いを把握できます。口座開設の手順はCoincheckの始め方・GMOコインの始め方・bitbankの始め方で公式の流れに沿ってまとめています。
出典
- e-Gov法令検索:資金決済に関する法律 — 第63条の11(利用者財産の管理)、第63条の11の2(履行保証暗号資産)、第63条の19の2(対象暗号資産の弁済)。
- e-Gov法令検索:暗号資産交換業者に関する内閣府令 — 第26条(利用者区分管理信託の要件)、第27条(暗号資産の管理方法と100分の5の上限)、第28条(分別管理監査)。
- Coincheck:貸暗号資産取引説明書(PDF) — 利用者財産の安全管理、破綻リスク、借り受けた暗号資産の扱い。
- GMOコイン:セキュリティ — 預託された資産の分別管理、コールドウォレット管理。
- bitbank:お客さま資産保全への取り組み — 信託保全の概略、受益者代理人、注意事項。